倉庫業の許可とは??費用や期間をわかりやすく解説

目次
- 倉庫業の許可とは?受けないとどうなる?
- 倉庫業の許可はどこで申請する?
- 倉庫業の登録要件について
- 倉庫業の許可(登録)に必要な費用
- 倉庫業の許可(登録)にかかる期間
- 倉庫業の許可(登録)申請に必要な書類
- 登録後の継続手続きについて
- 倉庫業の許可 まとめ
■倉庫業の許可とは?受けないとどうなる?

倉庫業を営む倉庫は「営業倉庫」と呼ばれています。倉庫業を営むためには国土交通大臣の登録を受けなければならないと法律で定められています。
倉庫業という業務は極めて公共性の高い産業です。もし倉庫業の許可を得ずに倉庫業の営業を行ってしまった場合、無登録営業と見なされて**1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)が科せられます。
また倉庫業の許可・登録を受けていない事業者が、倉庫業を行うものであると人を誤認させるような表示・広告を行うことも法律で禁止されています。
さらに倉庫業の許可を得ていない「無登録業者」が誤認行為(商品やサービスの表示などによって、消費者を誤認させる行為)を行った場合には50万円以下の罰金に処せられます。このように、倉庫業における登録制度は厳格に運用されており、違反に対する処罰も重いものとなっています。
■倉庫業の許可はどこで申請する?

倉庫業の許可・登録の申請は各地方の運輸局が窓口になっており、窓口での申請以外にもメールでの申請が可能となっています。
倉庫業の許可制度には歴史的な変遷があります。平成14年以前は許可制でした。それまでは単に「他者から物品を預かること」を事業としていたためです。
しかし法改正以降は、「倉庫業の許可制」から「登録制」に移行されました。元々倉庫業の適正な事業運営に一定の条件を置くことは必要でしたが、顧客ニーズが多様化したことなどにより、物流業界では効率化も求められるようになったので、制度が変わることとなりました。
ただし、倉庫の施設が十分でない倉庫業の事業者が利用者に損害を与えることによって物流に悪影響を及ぼさないよう、登録の義務付けは必須要件として維持されています。この制度変更により、手続きの簡素化が図られつつも、業界の品質維持が確保されています。
■倉庫業の許可(登録)の要件について
倉庫業として許可(登録)を受けるには一定の要件を満たさなければなりません。
主要な要件は以下の通りです。
要件項目 | 詳細内容 |
倉庫管理主任者の選任 | 国土交通省令に定める資格要件を満たした管理者を配置 |
欠格事由非該当 | 申請者が法定の欠格事由に該当しないこと |
施設設備基準適合 | 倉庫種類別の技術基準を満たすこと |
土地利用制限クリア | 建築基準法等の制限を受けない立地であること |
〇倉庫管理主任者を選任すること
倉庫業の許可をとるためには「倉庫管理主任者」を選任しなければなりません。倉庫管理主任者とは「国土交通省令に定める倉庫を管理する者」のことです。原則として一つの倉庫につき1人の選任が必要です。
倉庫管理主任者になるには、国土交通大臣の定める講習を修了すること、あるいは倉庫の管理業務に3年以上の実務経験が必要など、一定の要件を満たす必要があります。この制度により、専門知識を持った人材による適切な倉庫管理が確保されています。
〇申請者が欠格事由に該当しないこと
倉庫業の申請者である会社の役員などが、欠格事由に該当していないことも重要な要件です。欠格事由とは、倉庫業法第25条の3に定められた事項で、2年以内に倉庫業の登録の取り消しを受けている場合などが該当します。この規定により、過去に問題を起こした事業者による再参入を適切に制限しています。
〇倉庫の施設設備基準を満たしていること
倉庫の種類別で定められている「施設設備基準」を満たすことも要件の一つです。施設設備基準には、外壁や床の強度や関連法令適合性の他、防水性能や耐火性能、消火設備や災害防止措置、防犯措置などの基準が詳細に定められています。
これらの基準は、預託された貨物の安全確保と適切な保管環境の維持を目的としており、倉庫業の信頼性確保において不可欠な要素となっています。
〇土地の制限がないこと
倉庫業として使用する施設、または倉庫を建築する場所が建築基準法や都市計画法の制限を受けない土地にあることが、倉庫業許可(登録)の要件になります。
住居地域(準住居地域を除く)や開発行為の許可を申請する必要のない市街化調整区域において、倉庫業の許可を受けることはできません。倉庫業の許可を得ようとする地域の地方自治体で、建築基準法などの制限を受けないか事前に十分な確認を行わなければなりません。
■倉庫業の許可(登録)に必要な費用

倉庫業の許可(登録)申請には登録免許税の支払いが必要になります。新規登録の場合は、登録から1か月以内に登録免許税9万円を支払う必要があります。
また倉庫業許可登録申請の手続きを行政書士に代理で依頼する場合には、別途専門家報酬が発生します。行政書士への依頼費用は事務所により異なりますが、申請書類の作成から提出まで一連の手続きを依頼する場合、数十万円程度の費用を見込んでおく必要があります。
その他にも、施設設備基準への適合のための工事費用や、倉庫管理主任者講習の受講費用なども必要に応じて発生することを考慮しておくべきでしょう。
■倉庫業の許可(登録)にかかる期間

倉庫業の許可(登録)は、権限に応じて標準処理期間が設定されています。
権限区分 | 標準処理期間 |
国土交通大臣権限 | 3か月 |
地方運輸局長権限 | 2か月 |
これらは標準処理期間(対象の手続きの申請受付から登録・認可までに通常必要とされる期間)として設定されています。倉庫業の許可(登録)に当たり、書類審査や現地調査などが行われる期間があるため、登録まで数か月を要することを計画に含めておく必要があります。
申請書類に不備がある場合や、施設設備基準への適合に問題がある場合は、さらに時間を要することもありますので、事前の準備を十分に行うことが重要です。
■倉庫業の許可(登録)申請に必要な書類

倉庫業の登録申請には多数の書類が必要となります。主要な必要書類は以下の通りです。
書類カテゴリ | 主要書類 |
図面関係 | 倉庫付近の見取図、配置図、平面・立面・断面図、矩計図 |
申請書類 | 倉庫業登録申請書、倉庫明細書 |
法人関係 | 登記簿謄本、商業登記簿謄本 |
建築関係 | 建築確認済証、完了検査済証 |
管理体制 | 倉庫管理主任者関連書類、宣誓書 |
営業関係 | 倉庫寄託約款 |
その他 | 施設設備基準別添付書類チェックリスト |
なお、申請する倉庫の種類によっては追加書類が必要となります。例えば食品を保管する場合は「食品衛生法に定める営業許可証」、また冷蔵倉庫などの場合は「冷蔵能力計算書」など、倉庫の種類や用途に応じた専門的な添付書類が求められます。
書類の準備は複雑で時間を要するため、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。特に図面類については建築士による作成が必要な場合もあります。
■登録後の継続手続きについて
倉庫業は許可(登録)を受けた後も継続的な手続きが必要になります。これらの手続きは適正な業務運営の確保と行政による監督を目的としています。
〇定期報告義務
倉庫業者には四半期ごとに行う定期報告義務があります。
報告書類 | 報告時期 | 内容 |
受寄物入出庫高報告及び保管残高報告 | 四半期ごと | 品目別の入出庫実績と保管残高 |
期末倉庫使用状況報告 | 四半期ごと | 倉庫種類別の面積と使用状況 |
「受寄物入出庫高報告及び保管残高報告」は、倉庫業法施行規則に定める様式に従って作成する書類です。4月から起算して四半期ごとに作成して提出します。期中の入出庫高や期末時の保管残高を、品目ごとに詳細に報告する必要があります。
「期末倉庫使用状況報告書」は、倉庫の種類ごとに所管面積や使用状況などを記載して提出します。こちらも4月を起算月とし、四半期ごとに使用状況を確認し、営業所ごとに提出しなければなりません。
〇変更時の手続き
許可した内容に変更があった場合には、必要に応じて各種手続きが必要となります。
手続き名 | 必要となる場面 |
登録変更の届出 | 倉庫の構造・種類・設備の変更時 |
営業の譲渡譲受届出 | 事業の譲渡・譲受時 |
役員選任・変更届出 | 法人役員の選任・変更時 |
トランクルームの認定 | トランクルーム認定取得時 |
料金設定変更届出 | 料金変更時 |
事故発生の届出 | 重大事故・インシデント発生時 |
特に「事故発生の届出」については、重大事故が起きた場合や労働災害、倉庫の火災(死者が発生したものや社会的影響の大きいもの)、危険物の漏えい、預かっている物品の盗難など(社会的影響の大きいもの)といった重大インシデントが起こった際に必要になる重要な手続きです。
これらの継続手続きを適切に履行することで、倉庫業の社会的信頼性が維持され、健全な業界発展に寄与することができます。
■倉庫業の許可まとめ

倉庫業の許可制度について詳しく解説してきました。人類の歴史において物を「貯蔵する」または「運搬する」といった、現在の物流の機能につながる行為は、人類の有史以前より営まれてきた重要な活動です。人々は物流や貯蔵を通じ、生活や社会制度を築き発展させてきたと言っても過言ではないでしょう。
現代では「保管(貯蔵)」を行う倉庫業者や「輸送(運搬)」を行う運送業者などが物流業を営み、重要な社会インフラとしての役割を果たしています。特にeコマースの急激な発展により、倉庫業の重要性はますます高まっています。
こうした社会インフラとしての物流を構成する大事な要素の一つが「倉庫」です。物をある場所に適切に保管すること、そして2地点間の移動の結節点としても利用される「倉庫」は、現代の物流システムにおいて欠かすことのできない存在です。
だからこそ倉庫業の許可(登録)を適切に受け、法令遵守と品質向上に努めながら誠実な業務を行っていくことは、倉庫業者の重要な社会的責任であり、使命でもあります。
適切な許可手続きを経て、継続的な改善努力を続けることで、信頼される倉庫業者として社会に貢献していくことができるでしょう。
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