3PLと倉庫業の違いを完全解説|事業者選択のポイントと成功への道筋

3PL(サードパーティロジスティクス)と倉庫業の根本的な違いから、各事業形態の特徴、3PL事業者になるための注意点まで詳しく解説します。物流戦略の構築を検討している企業や、3PL事業への参入を目指す事業者に向けて、実践的な情報をお届けします。
目次
- ■ 3PLとは何か
- 〇 3PL事業者と倉庫業の根本的な違い
- 〇 3PL事業者と物流DXの関係
- 〇 3PL倉庫と物流ロジスティクス
- 〇 3PL物流倉庫の種類
- ■ 倉庫業の基本概念
- ■ 3PL倉庫事業者になるための注意点
- ■ まとめ
■ 3PLとは何か?

3PL(Third Party Logistics:サードパーティロジスティクス)とは、企業が自社で実施していた物流業務を第三者の専門事業者に委託する運用形態です。単純な業務代行にとどまらず、物流戦略の立案から改善提案まで包括的なマネジメント業務を担うことが最大の特徴といえます。
3PLサービスを提供する「3PL事業者」は、荷主企業のコアビジネス集中を支援し、物流業務全体の効率化と品質向上を実現する重要な役割を果たしています。
〇 3PL事業者と倉庫業の根本的な違い
倉庫業と3PL事業者の違いを理解するには、それぞれの事業範囲と役割を明確に把握する必要があります。
倉庫業の特徴
倉庫業は、顧客から寄託を受けた物品を安全に保管することを主要業務とします。原料から完成品、冷凍・冷蔵品から危険物まで、多様な商品の保管機能に特化したサービスを提供します。
3PL事業者の特徴
一方、3PL事業者は委託された物流業務を包括的に管理し、運送業や倉庫業と連携しながら最適な物流戦略を構築・運営します。保管業務だけでなく、商品調達から最終配送までをトータルコーディネートする「物流のプロフェッショナル」としての役割を担います。
項目 | 倉庫業 | 3PL事業者 |
主要業務 | 物品の保管 | 物流業務の包括管理 |
事業範囲 | 保管機能中心 | 調達〜配送まで全工程 |
提供価値 | 安全な保管サービス | 物流戦略の構築・最適化 |
顧客との関係 | 保管サービス提供者 | 物流パートナー |
近年、荷主企業のコアビジネス集中ニーズや物流業務の効率化要求が高まり、従来の倉庫業から3PL事業へ展開する企業が増加しています。
〇 3PL事業者と物流DXの関係
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル化と機械化によりオペレーション改善や働き方改革を推進する取り組みです。現代の物流戦略において、物流DXは必要不可欠な要素となっています。
大手企業のみが取り組める領域と思われがちですが、実際には中小企業こそ積極的に導入すべき分野です。ただし、数百万円から数千万円の大規模投資は失敗リスクが高いため、段階的な導入が重要になります。
現在市場には、生産性向上や業務効率化を実現する多様なツールが提供されています。3PL事業者にとって生産性向上は経営に直結する重要要素であり、自社改善が荷主企業の物流現場改善にも直結するため、取引関係の向上にも寄与します。
〇 3PL倉庫と物流ロジスティクス
ロジスティクスの語源は軍事用語の「兵站」にあります。第二次世界大戦において、連合国軍が勝利を収めた要因の一つが、必要な兵力と物資を戦場に継続供給できた優れたロジスティクス(兵站)能力だったとされています。
現代ビジネスにおいて、物流は実際の荷物移動「活動」を指し、ロジスティクスはその活動を効率的に「管理」することを意味します。近年、ロジスティクスは単なる物流管理を超えて事業戦略の重要な構成要素として位置づけられ、経営課題解決の有力手段として注目されています。
燃料価格上昇、人件費増加、働き方改革など、物流事業を取り巻く環境は厳しさを増していますが、そのような状況下でも顧客満足度向上とサービスレベル向上を追求し続ける必要があります。この課題解決の鍵となるのが、戦略的なロジスティクス活用といえるでしょう。
〇 3PL物流倉庫の種類
3PL物流倉庫は、保有資産の観点から「アセット型」と「ノンアセット型」に大別されます。
アセット型3PL倉庫
自社で設備や拠点を保有するタイプの事業者です。自社資産による運用により意思疎通が図りやすく、効率的な業務遂行が可能です。また、保有資産活用によりサービスノウハウが蓄積されやすく、品質向上が期待できます。
ただし、保有資産にサービスが制約されるため、ノンアセット型ほどの柔軟性は期待できません。
ノンアセット型3PL倉庫
自社で設備を保有しない事業者形態です。顧客ニーズに応じて他社との連携・提携を活用したソリューション提案を行います。
設備を自社保有しないため柔軟な提案が可能で、輸配送方法や保管方法についても最適な外部企業との連携により、効率的なサービス提供を実現できる点が大きなメリットです。
■ 倉庫業の基本概念

倉庫業は「寄託を受けた荷物を倉庫で保管する営業形態」として定義されます。簡潔に表現すると「荷物を預かり保管することで対価を得るビジネス」です。
倉庫業は公益性の高さから2002年まで許可制が採用されていましたが、競争力向上と物流業務効率化を目的として登録制に変更されました。現在、倉庫業の登録申請は各地方運輸局が窓口となり、電子申請での手続きが可能となっています。
■ 3PL倉庫事業者になるための注意点
3PL倉庫事業への参入を検討する場合、以下の重要ポイントを押さえることが成功の鍵となります。
業界動向の把握
3PL業界の将来展望を理解することが重要です。共同物流、共同配送、製造業のトヨタ生産方式を物流に応用したジャストインタイム構築などが求められています。
ジャストインタイムでは、需要に合わせて調達から保管、配送までを連携することで、配送効率化、多頻度小ロット配送、配送時間遵守、欠品防止を実現します。3PL倉庫事業者はこの仕組みにおいて極めて重要な位置を占めており、理解不足はクライアント(荷主)に迷惑をかける可能性があります。
クライアントの事業内容、取扱商材、オムニチャネル戦略、DXやサプライチェーン構築方針などを詳細にヒアリングし、理解することが不可欠です。荷主企業の業界調査を行い、国内外の動向に関心を持ち、業界に精通した対話ができることが理想的です。
システム・数値分析力の強化
3PL倉庫事業者には、物流をデータ化・可視化し、将来の流れを予測して最適なロジスティクスを構築する能力が求められます。
生産性向上においても、業務完了時期による生産性向上率や、生産性低下要因の数値的分析など、勘や経験ではなく論理的な説明力が必要です。仮説立案から実行、進捗状況のダッシュボード化による可視化が理想的です。
単純な出荷完了だけでなく、管理者としてのスタッフ作業状況確認や安全管理の観点から、業務時間のリアルタイム把握ニーズも増加しています。システムによる業務の数値化、最適稼働時間算出、数値に基づく状況判断力が重要な差別化要素となります。
積極的な情報発信
物流倉庫現場は日常業務に追われ、情報収集が困難な環境にあります。外出機会の制限、同業者との情報交換機会の不足、守秘義務による制約などにより、担当者の視野が狭くなるリスクがあります。
意識的な情報収集と、その情報を自社に当てはめた考察の発信を心がけることが重要です。発信先は社内、パートナー企業、機密情報に配慮したSNSやブログなど多様な選択肢があります。
ロジスティクスイノベーションの進展において、輸送の機械化から荷役の機械化、物流管理の機械化と発展してきた歴史を踏まえ、現在のロジスティクス4.0「IoTやAIによる省人化と標準化」に対する自社の見解を持つことが重要です。
サプライチェーン全体での思考
3PLの「L」はロジスティクスを意味し、調達から生産・物流・販売までのボーダレスな最適化を指します。倉庫の「保管」はロジスティクス全体のほんの一部に過ぎません。
荷主からのコスト削減要求に対して、単純な人海戦術による対応は長期的な事業継続を困難にします。在庫消化不良、過剰在庫、賞味期限切れなどによるロスとキャッシュフロー悪化に着目し、調達から販売までのサプライチェーン全体を考慮した提案こそが物流のプロとしての役割です。
EC市場拡大により送料比率が上昇し、物流コストが注目される中、安さだけでなく事業戦略にとって最適な物流についての相談ニーズが増加しています。真の意味での3PL事業者が求められている現状があります。
将来ビジネスモデルの構想
1990年代のEC開始から約20年でAmazonは巨大な存在となり、携帯電話はスマートフォンに進化し、業界トップ企業もAppleに変わりました。この20年間で業界の主役と社会の流れは大きく変化しました。
自動車の所有からレンタルへの移行、旅行のオンライン申込み普及、ビデオの動画配信サービス化など、身近な業界でもビジネスモデルの変化が進んでいます。
時代の流れに取り残されないよう、既存ビジネスの枠にとらわれない視点が重要です。現在の保管中心ビジネスで荷主が満足しているか、時代の流れを見据えた自社サービスのあるべき姿を常に意識することが大切です。
5年、10年で様々な業界の「当たり前」が変化する中、守りの姿勢ではなく、特化戦略や荷主が喜ぶ流通加工業務の拡充など、魅力的な企業を目指す「こうありたい」という姿勢が重要といえます。
■ まとめ

3PL事業者と倉庫業の選択指針
- 保管中心のサービス:倉庫業
- 物流戦略の包括的最適化:3PL事業者
- コスト重視の単純業務:倉庫業
- 事業戦略と連携した物流構築:3PL事業者
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