EC倉庫とは?その意味や利用するメリット、選定ポイントまで徹底解説

EC市場の急速な拡大に伴い、注目を集めているのがEC倉庫です。従来の倉庫とは異なる特徴を持つEC倉庫は、EC事業の成功に欠かせない存在となっています。本記事では、EC倉庫の基本概念から活用メリット、選定時のポイントまで詳しく解説いたします。
目次
・ そもそもEC物流とは?
・ EC倉庫とは?
・ EC倉庫の種類
・ EC倉庫を利用するメリット
・ EC物流が抱える課題と対策
・ EC倉庫に求められる機能やサービス
・ EC倉庫を選ぶべきポイント
・ EC物流まとめ
■ そもそもEC物流とは?

EC物流とは、注文を受けた商品が顧客の手元に届くまでに発生する、あらゆる物流プロセスを指します。具体的には、インターネットを通じて行われるEC(イーコマース/電子商取引)において生じる商品の入荷、在庫管理、保管、発送などの業務全般を含みます。
従来の物流業務とは性質が大きく異なり、EC物流では多様で複雑な対応が求められます。そこで重要な役割を果たすのが、ECに特化した倉庫である【EC倉庫】です。
従来物流とEC物流の違い | |
出荷単位 | 従来:大ロット / EC:小ロット・多品種 |
配送先 | 従来:企業間 / EC:個人宅中心 |
処理件数 | 従来:少数・大量 / EC:多数・少量 |
要求速度 | 従来:標準 / EC:即日〜翌日配送 |
■ EC倉庫とは?
EC(イーコマース)倉庫とは、EC通販に特化した倉庫施設のことで、主に一般消費者向けの商品を保管・管理しています。Amazonや楽天のように自社でEC倉庫を保有する大手事業者もありますが、近年では専門業者にEC倉庫の運営を委託する事業者が急速に増加しています。
EC倉庫では、ECサイトを通じて売買される商品について以下の業務を担います。
〇 主な業務内容
- 商品の入荷・検品
- 在庫の格納・保管
- 注文に応じたピッキング作業
- 流通加工・包装・梱包
- 出荷・発送手続き
これらの業務は販売事業者が自社でEC倉庫を構築して運用する場合もありますが、EC倉庫の専門業者にアウトソーシング(業務委託)するケースが主流となっています。
EC倉庫は通常の倉庫業とは根本的に異なるため、以下の特別な対応が必要です。
1. 在庫管理の効率化
EC倉庫では基本的に小ロットの商品や多品種の品物を取り扱うケースが大多数を占めるため、従来の倉庫管理とは異なる高度な在庫管理システムが必要となります。
2. 多様な販売経路への対応
SNSやWebサイト、スマートフォンアプリなど、現代の販売経路は急速に多様化しています。このため、様々な販売業態に柔軟に対応できる体制構築が不可欠です。
3. 迅速かつ正確な配送の実現
商品の破損や配送遅延などのトラブルは、顧客離れの直接的な原因となります。迅速かつ正確な対応に加え、配送状況の適切な通知など、きめ細やかな対応が顧客満足度向上、物流品質改善、ブランドイメージ向上において重要な要素となります。
■ EC倉庫の種類
EC倉庫は運営形態や特徴により、大きく4つのタイプに分類されます。EC事業者は自社の特徴や要求に合わせて最適なタイプを選択する必要があります。
倉庫タイプ | 特徴 | 適用場面 |
倉庫サービス主体型 | EC事業者ごとに最適化された運用 | 特殊な運用方法が必要な場合 |
業種特化型 | 特定業種に特化した設備・ノウハウ | 専門性が求められる商品 |
ECサイト販売主体型 | 商品預かりから顧客対応まで一貫サポート | 総合的なサービスを求める場合 |
システム会社提携型 | システム化により費用を抑制 | シンプルな物流を行う事業者 |
〇 倉庫サービス主体型
EC倉庫が主体となって提供されるサービス形態です。各EC事業者の要求に応じて最適化された倉庫運用が可能で、特殊な運用方法が発生した場合でも柔軟に対応できるメリットがあります。
〇 業種特化型
特定業種のEC事業に特化し、その業界に適した流通や加工を行うことができるEC倉庫です。例えば家電製品専門のEC倉庫であれば、検品や修理などに対応できる専用設備が整備されています。
〇 ECサイト販売主体型
EC事業者から商品を預かり、商品の出荷から顧客対応まで一貫してサポートするEC倉庫です。代表例としては「FC(フルフィルメントセンター)」などが挙げられます。
〇 システム会社提携型
システム会社がEC事業者に適した倉庫を紹介する形態で運用されるのが一般的です。システム化により運用効率が高く、費用を抑制しやすいため、シンプルな物流を行っている事業者に適しています。
■ EC倉庫を利用するメリット
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EC倉庫の活用により、EC事業者は以下のような具体的なメリットを得ることができます。
1. コア業務への集中が可能
EC倉庫に業務を委託することで、自社で物流倉庫を保有する必要がなくなり、物流業務に割いていた貴重な人的リソースを確保できます。これにより、商品開発やマーケティング戦略など、自社でしかできない重要な業務に経営資源を集中投下することが可能になります。
2. 人的ミスの大幅削減
専門的なEC倉庫に業務を依頼することで、経験不足による配送ミスや梱包不備などを防ぐことができます。さらに物流品質の向上や継続的改善に加え、トラブル対応に要する時間やコストを大幅に削減することが可能です。
3. 繁忙期や急激な注文増加への柔軟対応
年末年始やセール期間などで急激に注文数が増加した場合でも、EC倉庫なら柔軟に対応することができます。自社倉庫で管理している場合、人的リソースや業務時間の確保が困難で、急激な注文増加に対処できない可能性が高くなりますが、EC倉庫への業務委託によってこのような課題を根本的に解消できます。
■ EC物流が抱える課題と対策
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EC物流は急速な市場拡大とともに、主に以下の3つの重要な課題を抱えています。
〇 人材確保の困難さ
ECサイトには実店舗と同様に繁忙期と閑散期が明確に存在します。加えて期間限定セールや広告効果により、予測が困難な急激な需要拡大のチャンスが訪れる場合があります。
これらの需要変動は時期によって必要な人材数が大きく異なるため、常に最適な人員配置を維持することは極めて困難です。注文増加時に人材不足となり、注文から到着までの期間(リードタイム)が長期化すると、顧客の不満につながり競合他社への流出を招く可能性があります。
〇 在庫管理の複雑化
ECサイトが様々な商品を消費者に正確に発送するためには、倉庫内での適切な在庫管理が必須条件となります。賞味期限やロット管理はもちろん、在庫数をリアルタイムで正確に把握することが求められます。
ECサイトで扱う商品数が増加すればするほど在庫管理は複雑化し、実店舗での販売も並行している企業の場合、在庫管理の複雑さは指数関数的に増加し、重大なトラブル発生リスクが高まります。
〇 物流コストの上昇
EC物流には倉庫使用料や従業員人件費はもちろん、在庫管理設備費、配送車両費、燃料費など多岐にわたるコストが発生します。事業規模によっては、EC物流コストが企業経営の大きな負担となることが懸念されます。
さらに近年では深刻なドライバー不足により宅配サービスの維持が困難になっています。需要と供給のバランス悪化により物流コストが継続的に上昇していることも、EC事業者が直面する重要な課題の一つです。
■ EC倉庫に求められる機能やサービス

現代のEC倉庫には、従来の倉庫機能を大きく超えた高度なサービスや機能が求められています。
〇 迅速な庫内作業の実現
購入者からの受注後、商品のピッキングから出荷まで全ての作業を迅速かつ正確に処理する必要があります。受注から納品までの時間短縮により購入者満足度を向上させ、リピート購入や口コミによる新規顧客獲得につなげることができます。
特に近年では配送スピードが購入決定の重要な要因となっており、当日配送や翌日配送といった顧客ニーズに対応するため、EC倉庫内作業の迅速処理が必要不可欠となっています。
〇 豊富な作業人員と自動化設備
EC商品の入荷から出荷まで全ての作業には多くの専門スタッフが必要です。特にピッキングや流通加工、包装・梱包業務では、人手による細かく正確な作業が求められるケースが少なくありません。
しかし近年の物流市場では慢性的な労働力不足が深刻化しており、作業人員の確保が困難になっています。そこで重要な役割を果たすのが、各種省力化・自動化設備(マテハン機器)です。人手で処理してきた作業の一部を機械対応に置き換えることで、安定した庫内オペレーションを実現する必要があります。
〇 付帯業務への幅広い対応力
庫内オペレーションの基本機能に加え、顧客の多様な周辺業務や付帯業務要求に対応できる体制構築が重要です。
例えば商品の撮影、採寸、商品説明文作成を代行する「ささげ業務」は代表的なサービスの一つです。実際の販売商品が保管されているEC倉庫で「ささげ業務」を展開することで、商品販売開始時期の前倒しや、販売サイト上でのスピーディーな商品入れ替えなどが実現可能になります。
主な付帯サービス | 内容 | 効果 |
ささげ業務 | 撮影・採寸・原稿作成 | 販売開始時期の短縮 |
ギフトラッピング | 贈答用包装 | 顧客満足度向上 |
カード同梱 | メッセージカード挿入 | ブランドイメージ向上 |
セット組み | 複数商品の組み合わせ | 付加価値創出 |
返品・交換対応 | アフターサービス | 顧客信頼度向上 |
■ EC倉庫を選ぶべきポイント

EC倉庫選定時には、以下の3つの重要なポイントを総合的に検討する必要があります。
〇 サービス内容の詳細確認
最も重要なのは「提供サービス内容」の詳細確認です。業務を委託したい内容が、候補となるEC倉庫で完全にカバーできるかどうかの徹底的な確認が必要です。
サービス内容や料金体系、対応スピード、対応可能出荷量は各EC倉庫によって大きく異なります。また化粧品や医薬部外品などの特殊な加工が必要な商品の場合、倉庫作業員が必要な資格や免許を取得していることを事前に確認する必要があります。
〇 倉庫立地条件の戦略的評価
2つ目は「EC倉庫の立地条件」です。立地条件はECサイト運用の利便性や配送効率に直結する重要な要因です。立地により商品納品時間や発送までの所要時間が大きく変わるため、配送頻度が高い事業者は全国に拠点を持つ、または複数拠点を戦略的に配置しているEC倉庫を選択することが最適です。
〇 システム連携の容易性
3つ目は「システム連携の容易性」です。自社ECサイトと在庫管理システムの円滑な連携ができるかどうかの確認が極めて重要です。契約後の運用開始段階でシステム連携トラブルが発生しないよう、運用開始前の入念な確認と検証が不可欠です。
選定ポイント | 確認項目 | 重要度 |
サービス内容 | 委託範囲・料金・対応速度・出荷量・資格保有 | ★★★ |
立地条件 | 拠点数・配送エリア・納品時間・発送時間 | ★★★ |
システム連携 | ECサイト連携・在庫管理連携・API対応 | ★★★ |
■ EC物流まとめ

今回はEC倉庫について包括的にご紹介してまいりました。物流・倉庫業界においてもICT化・デジタル化が急速に進展し、ECサイト活用が飛躍的に増加している現在、多様化する顧客ニーズや物流形態に自社のみで対応することは極めて困難な状況となっています。
EC倉庫の戦略的活用により、複雑な顧客ニーズへの迅速対応が可能になるだけでなく、発送や荷受け業務に人材や時間を取られることなく、コスト削減と業務効率化を同時に実現できます。さらにEC倉庫の専門性を活用することで、配送ミスや在庫管理ミスを大幅に削減することも可能になります。
近年ではEC倉庫サービスを提供する専門業者が急速に増加しており、提供サービス内容も各業者によって大きく異なります。自社の取扱商品特性や企業規模、求める対応レベルに合わせて、最適な業務委託業者を慎重に選定することが、EC事業成功の重要な鍵となります。
EC市場の継続的拡大が予想される中、EC倉庫は単なるコスト削減手段ではなく、競争優位性確保のための戦略的投資として位置付けることが重要です。
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