
在庫引き当てってなに?かんたんに解説します

「在庫引き当て(ざいこひきあて)」という言葉は、物流や在庫管理の現場では日常的に使われていますが、初めて耳にする方には少し難しく感じるかもしれません。
ここでは、在庫引き当ての意味や基本的な考え方を、できるだけわかりやすく解説します。
在庫引き当てとは?
在庫引き当てとは、ある商品の注文に対して、その商品の在庫を確保・割り当てることを意味します。
簡単に言うと、「この注文には、この在庫を使うよ!」と事前に“キープ”しておくイメージです。
たとえばこんなシーン
- 商品Aの在庫が100個ある
- お客様Bから50個の注文が入った
- その50個をBさんのために「引き当てる」
このようにして、他の注文や出荷に使われないように確保するのが「在庫引き当て」です。
在庫があるのに出荷できない!? という事態を防ぐ
在庫引き当てを行っていないと、どうなるでしょうか?
注文が入っていたのに、
「他の出荷に使われてしまって在庫が残ってない…」
というトラブルが起きることがあります。
つまり、在庫があるかどうかだけでなく、在庫を“誰のために確保しているか”が重要なのです。
ロットやSKUとのちがいは?
以前の記事で取り上げた「ロット」や「SKU」は、“在庫をどう分類するか”という考え方です。
一方、「引き当て」は“誰のためにどの在庫を使うのか”という運用上の管理です。
たとえば、
- SKU:商品ごとの品番・識別子
- ロット:製造や仕入れ単位
- 引き当て:注文ごとに在庫を確保する動き
というように、意味する役割が異なります。
なぜ在庫引き当てが必要なの?

在庫引き当ては、一見シンプルな「在庫の確保」に思えますが、実は物流の正確性・スピード・信頼性を支える重要な仕組みです。
ここでは、在庫引き当てが求められる理由を、現場目線でわかりやすく解説します。
1. 注文ごとの在庫確保で「出荷ミス」を防ぐ
引き当てを行うことで、注文単位での在庫の確保が可能になります。
これにより、「注文は受けたのに在庫が足りない」「先に別の注文に使われてしまった」というミスを防げます。
とくに複数の注文が同時に動く現場では、誰の注文かを明確にひもづけることが正確な出荷につながります。
2. 「出荷順の優先管理」ができる
在庫が限られている場合でも、引き当て機能を使えば、
- 緊急出荷分に先に在庫を確保
- 得意先Aと得意先B、どちらに優先して出すかの判断を反映
といった優先順位をつけた運用が可能になります。
つまり、数量の在庫だけでなく、「出荷する順番」までコントロールできるのです。
3. 事前に在庫不足を察知できる
在庫引き当てを行っておくと、システム上で「未引き当て注文」=“在庫が足りない可能性がある注文”がすぐに可視化されます。
これにより、
- 「欠品になる前に追加発注」
- 「別ロットや代替品で対応」
などの事前対処が可能になります。
4. 情報の透明化で業務がスムーズに
倉庫・営業・カスタマーサポートなど、部署間の連携でも、在庫引き当て情報があることで、
- 倉庫:「この注文分は確保済み」と判断できる
- 営業:「この注文は在庫が確保されているから確実に出荷できる」と説明できる
- CS:「このお客様の商品は、〇日に出荷予定です」と案内できる
といったように、全体の情報共有の精度が格段に上がります。
5. BtoBビジネスでは信頼構築にもつながる
とくに法人取引では、「確実に納品される」「約束通り届く」ことが信頼につながります。
引き当て管理がない状態では、納期遅れや出荷ミスが起こりやすくなり、結果として取引停止やクレームにもなりかねません。

在庫引き当てが必要になる場面とは?

在庫引き当ては、すべての出荷業務で必要になるわけではありません。むしろ、「注文の数」や「在庫の状況」が一定でない場合にこそ、重要な役割を果たします。
ここでは、どんなシーンで在庫引き当てが使われるのかを、具体例をまじえて見ていきましょう。
1. 限られた在庫を複数の注文に割り振るとき
たとえば、商品Aの在庫が50個ある状態で、以下のような注文が入ったとします:
- 注文①:30個
- 注文②:20個
- 注文③:10個
このような場合、「どの注文にどの在庫を割り当てるか」を決めるのが在庫引き当ての役割です。
先着順に出荷するのか、大口優先にするのか、取引先の重要度で判断するのか――その基準によって処理方法が変わります。
2. セット品などの構成商品に在庫を確保したいとき
セット商品やギフト商品など、「複数のアイテムを組み合わせて出荷する」ケースでは、すべての構成商品の在庫が揃っていないと出荷ができません。
この場合、構成パーツに対して「出荷予定分の在庫」を先に押さえておかないと、
- 出荷時に在庫が足りずセットが組めない
- 一部だけ先に使ってしまい後の注文が止まる
といったトラブルの元になります。
これを防ぐためにも、在庫引き当てで事前に確保しておくことが重要です。
3. ECモールや複数チャネルで在庫を共有しているとき
自社サイト・Amazon・楽天など、複数のチャネルで同じ在庫を販売している場合、在庫引き当てはよりシビアになります。
1つの注文が入った瞬間に、他チャネルでも同時に注文が入ることがあり、どちらかの注文が「在庫切れ」となるリスクが高くなります。
そこで、注文ごとにすばやく引き当てを行い、
「この在庫はこの注文に使う」と確保することで、在庫の取り合いを防ぐのが、在庫引き当ての重要な役割です。
在庫引き当ての精度を高めるポイント

在庫引き当ては、商品を確保しておく「約束」のようなもの。
この約束がズレてしまうと、出荷のミスや在庫の混乱につながります。
そこで、引き当ての精度を高めるために、現場で意識すべきポイントを紹介します。
1. 常に最新の在庫状況を把握する
在庫データが古かったり、実在庫と差があると、誤った引き当てにつながります。
そのためにも、
- 入出庫のタイミングで即時にシステムへ反映
- 倉庫内のロケーションと在庫のズレを定期的にチェック
- 実棚卸しとシステム在庫の突合せを行う
といった在庫精度の向上が大前提です。
2. 引き当てルールを明確にしておく
企業や商品の特性によって、優先すべき引き当てルールは異なります。
- 先入れ先出し(FIFO)で期限の近いものから出荷
- 優良顧客の注文を優先して引き当て
- ECと店舗用で在庫を分けて確保
など、自社に合ったルールを定めておくことで、無駄な在庫の動きや調整が減ります。
3. WMSや在庫システムとの連携を強化する
引き当てのミスは、「人の判断」だけに頼っていると発生しやすくなります。
WMS(倉庫管理システム)や在庫管理ツールと連携することで、
- リアルタイムでの在庫把握
- 自動での引き当て処理
- 欠品時の警告やアラート機能
などが活用でき、ミスの発生を大幅に減らすことができます。
4. 引き当て後のフォロー体制も大切
在庫引き当ては“予約”にすぎず、実際に商品が動くのはその後です。
そのため、「引き当てた商品がちゃんと出荷されたか?」「キャンセルはないか?」といったアフターフォローも重要です。
- キャンセルや変更時の引き当て解除ルール
- 他注文への再引き当て手順
- 出荷実績との突合せチェック
をしっかり設けておくことで、在庫の混乱を防ぎ、無駄なロスも減らせます。
神谷商店が行う在庫引き当てと強み

神谷商店では、入荷から出荷までを一貫して対応できる物流体制を活かし、在庫引き当ての精度とスピードにもこだわった管理を行っています。
「確保したはずなのに在庫がない」「出荷ミスが起きた」といったトラブルを防ぐために、以下のような体制と工夫を整えています。
1. 自社WMSと連携したリアルタイム引き当て
神谷商店では、独自に構築・運用しているWMS(倉庫管理システム)と連動させることで、在庫の動きと引き当て情報をリアルタイムで同期しています。これにより、
- 出荷指示と同時に正確な在庫引き当てが可能
- 二重引き当てや欠品による誤出荷を防止
- 管理画面から在庫の確保状況が即時に確認できる
といったスムーズなオペレーションを実現しています。
2. “商品単位”でなく“ロット・SKU単位”での細かい引き当ても可能
前回までに紹介したロット管理やSKU管理の仕組みと連動させているため、神谷商店では単純な「商品Aを10個引き当てる」といった処理だけでなく、
- 「ロットBの在庫から優先的に確保する」
- 「EC分はSKU001、店舗分はSKU002から引き当て」
といった粒度の細かい引き当ても柔軟に対応可能です。これにより、出荷後のトラブルや誤配送も大幅に削減できます。
3. キャンセル・変更にもすぐ対応できる仕組み
引き当て後のキャンセルや出荷内容の変更にも即時対応できるよう、再引き当てのフローをあらかじめ整備しています。
- キャンセル処理後は在庫が即時開放され、他注文に再利用可能
- 管理画面で引き当て状況が視覚化されているため、現場との連携もスムーズ
- 緊急対応が必要な場合も、スタッフ間で即共有できる体制
突発的なスケジュール変更が起こりがちなEC物流や繁忙期でも、柔軟かつスピーディーに対応できるのが神谷商店の強みです。
まとめ:正確な在庫引き当てが、物流品質を左右する

在庫引き当ては、単なる「在庫の確保作業」ではありません。
正確でスムーズな引き当てができるかどうかが、その後の出荷精度や業務効率、さらにはエンドユーザーからの信頼にも大きく影響します。
特に近年では、複数拠点・複数チャネルでの在庫運用が当たり前になってきたことで、「在庫があるのに出荷できない」「在庫がないのに引き当てられている」といった問題が起きやすくなっています。
だからこそ、
- リアルタイム性
- システム連携
- 現場との情報共有
など、あらゆる面での管理体制が求められます。
神谷商店では、こうした課題に対応するために、独自のWMS運用と引き当てフローの整備を進め、物流全体の“止まりにくさ”を実現しています。
「在庫はあるはずなのに出荷できない」
そんな状況を減らし、確実に・安心して任せられる物流体制を目指すなら、ぜひ在庫引き当ての見直しから始めてみてください。
