
倉庫業法とは、他者の物品を有償で預かる「倉庫業」を営むために事業者が守るべきルールを定めた法律です。結論から言えば、第三者の荷物を保管して対価を得る営業倉庫を運営するには、国土交通大臣の登録(許可)を受け、施設基準を満たし、倉庫ごとに倉庫管理主任者を配置することが義務付けられています。無登録で営業すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となるため、これから倉庫業を始める事業者だけでなく、倉庫を委託する荷主企業にとっても倉庫業法の理解は欠かせません。
本記事では、倉庫業法の定義から営業倉庫の種類、登録・許可の要件と申請の流れ、費用・期間の目安、違反した場合の罰則までを、物流のプロの視点で体系的に解説します。委託先の倉庫が法令を守っているかを見極める判断材料としてもご活用ください。
倉庫業法とは?目的と「倉庫業」の定義をわかりやすく解説
倉庫業法とは、営業倉庫の適正な運営を確保し、荷主企業や消費者の利益を保護することを目的とした法律です。中心となるのは「倉庫業」の定義で、ここを正しく押さえることが登録の要否を判断する出発点になります。
倉庫業法における「倉庫業」とは、簡単に言えば「第三者の物品を倉庫に保管し、その対価(料金)を受け取る事業」を指します。国土交通省の倉庫業法では、次のように定義されています。
「倉庫業」とは、寄託を受けた物品の倉庫における保管(保護預りその他の他の営業に付随して行われる保管又は携帯品の一時預りその他の比較的短期間に限り行われる保管であって、保管する物品の種類、保管の態様、保管期間等からみて第六条第一項第四号の基準に適合する施設又は設備を有する倉庫において行うことが必要でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)を行う営業をいう。(引用元:国土交通省「倉庫業法」)
要するに、企業や個人が所有する倉庫に他者の荷物を預かり、その対価を得る業務が「倉庫業」と定義されます。自社の荷物を自社の倉庫で保管するだけなら倉庫業には当たりません。この「他者の物品を有償で預かるかどうか」が、倉庫業法の規制を受けるか否かを分ける最初の分岐点です。
倉庫業法における「倉庫」の定義
倉庫業法では「倉庫」そのものも次のように定義されています。
「倉庫」とは、物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作を施した土地若しくは水面であって、物品の保管の用に供するものをいう。(引用元:国土交通省「倉庫業法」)
つまり倉庫とは、一般にイメージされる「四角い建物」だけを指すわけではありません。特定の工作を施した土地や水面(例えば原木を浮かべて保管する水面倉庫)も、物品の保管に供するものであれば倉庫業法上の「倉庫」に含まれます。物流の現場では「倉庫=建物」と捉えがちですが、法律上はより広い概念である点を理解しておくと、後述する倉庫の8区分も整理しやすくなります。
倉庫業に該当する例・該当しないケース
倉庫業法の対象になるかどうかは、実務では次のように分かれます。
倉庫業に該当する例
- 工業製品の原材料や部品をメーカーから預かり、一定期間保管する
- 食品会社の冷凍食品を低温倉庫で保管する
- 個人向けにトランクルームを提供し、荷物を預かる
- 物流センターでEC事業者の在庫商品を保管する
倉庫業に該当しないケース(倉庫業法の対象外)
- 飲食店で食事中にお客様のバッグを一時的に預かる
- クリーニング店が預かった衣類を仕上げまで保管する
- 短期間のイベントで荷物預かりサービスを提供する
これらは「営業に付随した保管」や「比較的短期間の保管」に当たり、営業倉庫には該当しないため、特別な登録や許可は不要です。EC事業の拡大に伴い在庫保管を外部に委託する企業が増えていますが、委託先が倉庫業の登録を受けた事業者かどうかは、後述するリスク管理の観点からも必ず確認しておきたいポイントです。EC在庫を外部に預ける際の選択肢は委託倉庫のメリット・デメリットもあわせて確認すると判断しやすくなります。

倉庫業法における営業倉庫と自家用倉庫の違い・倉庫8種類の比較
倉庫業法では、倉庫を大きく「営業倉庫」と「自家用倉庫」に分け、さらに営業倉庫を保管する物品の特性に応じて区分しています。ここを理解することが、自社の事業にどの登録が必要かを見極める鍵になります。
営業倉庫とは、第三者の物品を有償で保管する倉庫であり、倉庫業法の規制を受けます。例えば物流企業が荷主企業の商品を預かって保管する倉庫が該当し、運営には国土交通大臣の登録が必要です。一方、自家用倉庫は企業や個人が自社の荷物を保管するための倉庫で、他者の荷物を預からないため倉庫業法の規制対象にはならず、登録も不要です。メーカーが自社製品を一時保管する倉庫、農家が収穫物を貯蔵する倉庫、個人のガレージや物置などが自家用倉庫に当たります。
この営業倉庫と自家用倉庫の区別は、荷主企業が委託先を選ぶうえでも重要です。商品を有償で預かって保管するサービスは、本来「営業倉庫」として登録された事業者が提供すべきものです。もし登録のない自家用倉庫で他者の荷物を有償保管していれば、それは倉庫業法に違反した状態であり、預けた荷主側も思わぬリスクを負いかねません。委託を検討する際は、相手が営業倉庫として正規に登録された事業者かどうかを最初に確認しておくことが大切です。
営業倉庫の8種類(倉庫業 種類の比較表)
営業倉庫は、保管する物品の種類や設備基準に応じて主に次のように分類されます。営業倉庫 種類ごとに求められる設備や保管できる物品が異なるため、取り扱う商品に合った区分の倉庫を選ぶことが重要です。
| 倉庫の種類 | 特徴・設備基準 | 主な保管対象物品 |
|---|---|---|
| 1類倉庫 | 最も設備基準が厳しく、防火・防湿・耐火など多様な基準を満たす | 危険物・冷蔵品以外の一般貨物(最も幅広い) |
| 2類倉庫 | 防火性能を求められない倉庫 | 肥料、でん粉、塩、セメントなど |
| 3類倉庫 | 防火・防水・防湿・遮熱性能が低くてよい | 鉄材、陶磁器など |
| 野積倉庫 | 屋外に塀や柵で囲って野積みで保管 | 土石、レンガ、木材など |
| 水面倉庫 | 水上で物品を保管する | 原木など |
| 貯蔵槽倉庫 | タンクやサイロを利用した倉庫 | 穀物、液体・粉粒状の物質 |
| 危険品倉庫 | 消防法・関係法令に基づく危険物専用倉庫 | 高圧ガス、アルコール、可燃性物質など |
| 冷蔵倉庫 | 10℃以下での低温管理ができる倉庫 | 生鮮食品、冷凍食品など |
このように営業倉庫 種類は保管物品の特性ごとに細かく分かれており、取り扱う商材が複数にまたがる場合は複数区分の登録が必要になることもあります。どの区分に該当するか判断に迷う場合は、運輸局や倉庫業者に相談するのが確実です。各区分に共通して、営業倉庫として登録するには次のような基準を満たす必要があります。
- 耐火性・防水性・防湿性の確保:火災や水害による物品の損傷を防ぐ設備が求められます。
- 防犯対策の実施:盗難防止のための施錠設備や監視カメラなどが必要です。
- 建築基準法・都市計画法の遵守:営業倉庫は用途地域の制限を受け、住居専用地域には建設できません。
- 運輸局への定期的な報告:営業倉庫は運営状況を定期的に国へ報告する義務があります。
倉庫の機能や種類をより広く理解したい場合は、倉庫業の定義と営業倉庫の基本もあわせてご覧ください。

倉庫業の登録・許可に必要な要件と施設基準
倉庫業を始めるには、国土交通大臣の登録(実務上「許可」と呼ばれることもあります)を受ける必要があります。登録を受けるためには、施設・設備の基準、人的な体制、約款の整備という3つの観点を満たさなければなりません。倉庫業 登録の要件を整理すると次のとおりです。
施設・設備の基準を満たす
前章で触れたとおり、営業倉庫には倉庫の種類ごとに耐火・防火・防湿・防犯などの施設基準が定められています。例えば1類倉庫として登録する場合は、防火・防水・防湿の各基準を満たす建物・設備が必要です。これらの基準は、預かった物品を滅失・損傷から守るためのもので、基準を満たさない施設では登録が認められません。
倉庫管理主任者を配置する
倉庫業を営む事業者は、倉庫ごとに倉庫管理主任者を選任・配置することが義務付けられています。倉庫管理主任者は、倉庫の施設・設備の管理や、現場従業員の指導・監督などを担う責任者です。倉庫管理主任者になるには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 倉庫の管理業務に2年以上従事し、かつ指導監督的な実務経験を有する
- 倉庫の管理業務に3年以上従事した経験を有する
- 国土交通大臣が認定する倉庫管理主任者講習を修了する
選任の要件や講習の詳細は倉庫管理主任者の資格要件・選任ルールで詳しく解説しています。配置を怠ると是正の対象になるため、登録前に有資格者を確保しておくことが重要です。倉庫管理主任者は単なる名義上の役割ではなく、施設の保守点検、現場従業員への安全教育、保管物品の管理状況の把握など、倉庫の安全を実務的に支える責任者です。複数の倉庫を運営する場合は倉庫ごとに選任が必要になるため、事業拡大の計画段階から人材確保を見据えておくと、登録手続きがスムーズに進みます。
倉庫寄託約款を整備する
「倉庫寄託約款(そうこきたくやっかん)」とは、倉庫業者と荷主(荷物を預ける側)が取り交わす契約のルールを定めた書面です。登録にあたっては、この約款を定めて届け出る必要があります。倉庫寄託約款には、一般に次のような内容が含まれます。
- 業務の内容と適用範囲
- 入庫・出庫の手続き
- 保管期間と保管条件
- 損害保険の有無
- 料金体系(保管料・荷役料など)
- 免責事項や賠償責任の範囲
国土交通省は標準倉庫寄託約款を示しており、これに準拠した約款を用いることで、荷主・倉庫業者双方の権利義務が明確になります。

倉庫業登録の申請手順と費用・期間の目安
ここでは、倉庫業 登録を実際に進める際の手順と、かかる費用・期間の目安を解説します。手続きは多岐にわたるため、計画的に準備を進めることが大切です。なお費用・期間は2026年時点の一般的な目安であり、倉庫の規模・種類や地域によって変わるため、実際の金額・所要日数は管轄の運輸局や専門家に確認してください。
申請から登録までのステップ
- 事前準備・相談:取り扱う物品と倉庫の種類を確定し、施設が基準を満たすかを確認します。不明点は管轄の地方運輸局に事前相談すると手戻りを防げます。
- 必要書類の作成:倉庫業登録申請書、倉庫の図面、施設・設備の明細、倉庫管理主任者に関する書類、倉庫寄託約款などを揃えます。
- 国土交通大臣(地方運輸局経由)への申請:作成した書類を管轄の地方運輸局へ提出します。
- 審査:施設基準への適合や約款の内容、主任者の要件などが審査されます。
- 登録・営業開始:登録が完了すると営業倉庫として正式に事業を開始できます。
登録にかかる費用・期間の目安
倉庫業の登録には、申請に伴う実費(登録免許税など)に加え、施設を基準に適合させるための設備投資が必要になる場合があります。審査期間は提出書類の内容や倉庫の状況によって異なりますが、一般には数か月程度を見込んでおくとよいでしょう。これらはあくまで2026年時点の一般的な目安で、具体的な費用・期間は倉庫の規模や種類、地域によって大きく変わります。正確な金額・所要日数は、管轄の地方運輸局や行政書士などの専門家に確認することをおすすめします。
申請でつまずきやすいポイント
倉庫業 登録の申請は、書類の不備や施設基準の認識違いで差し戻しになるケースが少なくありません。特につまずきやすいのは次の3点です。第一に、用途地域の確認不足です。営業倉庫は都市計画法の用途地域の制限を受けるため、建設予定地や既存施設がそもそも倉庫として使えるかを事前に確認しないと、計画が根本から崩れることがあります。第二に、倉庫の種類の選定ミスです。取り扱う物品に対して適切な区分を選ばないと、必要な設備基準を満たせず登録できません。第三に、倉庫管理主任者の要件充足の見落としです。要件を満たす人材の確保が登録時点で間に合わないと、手続き全体が遅れてしまいます。これらは事前相談と早めの準備で多くが回避できるため、計画初期の段階で運輸局や専門家に相談しておくことが、結果的にもっとも近道になります。
登録の要件・費用・期間をさらに具体的に知りたい場合は、倉庫業の許可に必要な要件・費用・期間で詳しく解説しています。自社で倉庫を持たずに在庫保管・物流を外部へ委託する選択肢を検討している場合は、登録済みの営業倉庫を持つ事業者へ相談するのが近道です。

倉庫業法に違反するとどうなる?罰則と無登録のリスク
倉庫業法では、営業倉庫を運営する際に国土交通大臣の登録が必須とされています。この登録を行わずに倉庫業を営んだ場合は法律違反となり、罰則が科せられます。ここでは無登録営業のリスクと、荷主企業が委託先を選ぶ際の注意点を解説します。
無登録営業の罰則
倉庫業法に違反し、無登録で倉庫業を営んだ場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(またはその両方)が科せられる可能性があります(引用元:国土交通省「倉庫業法」)。さらに、違法な倉庫業を継続した場合には、事業の停止命令など行政上の措置が取られることもあります。
名義貸し・名義借りの禁止
倉庫業法では、自社の営業倉庫の登録を他人に貸したり、他人の登録を借りて営業したりする「名義貸し・名義借り」も禁止されています。これに違反した場合も、無登録営業と同様に1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となり得るため、十分な注意が必要です。
荷主企業が負うリスク
無登録の倉庫業者に荷物を預けることは、預ける側の荷主企業にとってもリスクになります。施設基準を満たさない倉庫では火災・水害・盗難などで商品が損傷・滅失する恐れがあり、適切な賠償を受けられない可能性もあります。実際、過去には大規模な物流施設での火災が発生し、倉庫のリスク管理の重要性が改めて問われました。委託先を選ぶ際は、その倉庫が営業倉庫の登録を受けているか、適切な保険に加入しているかを必ず確認しましょう。登録の有無は事業者の信頼性を測る客観的な指標であり、契約前に確認しておくことで、万一のトラブル時にも預けた物品が法令に基づいて適切に管理・補償される体制かどうかを見極められます。料金の安さだけで委託先を選ぶのではなく、施設基準への適合や保険体制、報告義務の履行といった「目に見えにくい安全性」まで含めて総合的に判断することが、長期的に安定した物流体制につながります。

倉庫業法に関するよくある質問(FAQ)
倉庫業法について、事業者・荷主企業からよく寄せられる質問をまとめました。
Q1. 自社の商品を自社の倉庫で保管するだけでも倉庫業法の登録は必要ですか?
A. 必要ありません。倉庫業法が規制するのは「他者の物品を有償で預かる」営業倉庫です。自社の荷物を自社の倉庫で保管する自家用倉庫は規制対象外で、登録は不要です。
Q2. 倉庫業の「登録」と「許可」は違うものですか?
A. 現在の倉庫業法では、営業倉庫の運営には国土交通大臣の「登録」を受ける制度が採られています。実務では「許可」と表現されることもありますが、いずれも営業倉庫として営業するために必要な手続きを指しています。
Q3. 倉庫管理主任者は倉庫ごとに必要ですか?
A. はい。倉庫管理主任者は倉庫ごとに選任・配置することが義務付けられています。複数の営業倉庫を運営する場合は、それぞれに要件を満たす倉庫管理主任者を確保する必要があります。
Q4. トランクルームを運営する場合も倉庫業法の対象になりますか?
A. 利用者の物品を有償で預かって保管する場合は倉庫業に該当し、登録が必要になるのが一般的です。サービスの形態によって扱いが変わる場合があるため、管轄の運輸局に確認することをおすすめします。
Q5. 委託先の倉庫が営業倉庫の登録を受けているか確認する方法はありますか?
A. 倉庫業者に登録の有無を直接確認するのが確実です。営業倉庫として登録された事業者は、登録に基づいて営業しているため、契約前に登録状況や保険加入の有無を確認しておくと安心です。
Q6. 営業倉庫と自家用倉庫は、設備や運用の面でどう違いますか?
A. 営業倉庫は第三者の物品を有償で預かるため、倉庫業法に基づく施設基準(耐火・防水・防湿・防犯など)の充足、倉庫管理主任者の配置、運輸局への定期報告といった義務を負います。一方、自家用倉庫は自社の荷物を保管するだけなので、これらの法的義務はありません。預ける側の荷主企業にとっては、法令に基づいて管理される営業倉庫を選ぶことが、商品の安全確保につながります。

まとめ|倉庫業法を理解して信頼できる営業倉庫を選ぶ
倉庫業法は、営業倉庫の適正な運営を確保し、荷主企業や消費者の利益を守るための法律です。本記事の要点を整理すると次のとおりです。
- 倉庫業とは、他者の物品を有償で預かり保管する事業であり、自社の荷物を保管する自家用倉庫は規制対象外
- 営業倉庫は国土交通大臣の登録が必要で、保管物品に応じて8種類に区分される
- 登録には施設基準の充足・倉庫管理主任者の配置・倉庫寄託約款の整備が求められる
- 無登録営業や名義貸しは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となり得る
- 荷主企業も、委託先が営業倉庫の登録を受けているかを確認することが重要
倉庫業を始める事業者はもちろん、倉庫を利用する荷主企業にとっても、倉庫業法を理解することは安全で確実な物流体制づくりの第一歩です。信頼できる倉庫業者を選ぶ際は、営業倉庫の登録を受けているか、施設基準や保険体制が整っているかを必ず確認しましょう。
神谷商店は、営業倉庫の運営と保管・物流のノウハウを活かし、荷主企業のさまざまな物流課題に対応しています。倉庫の活用や在庫保管の委託についてお悩みの方は、お見積もり・お問い合わせはこちらからお気軽にご相談ください。