
保管ってなに?かんたんに説明します
物流の現場で頻繁に使われる「保管(ほかん)」という言葉。
でも、具体的にどんな意味を持ち、どんな役割を果たしているのかを、あらためて聞かれると答えにくい方もいるかもしれません。ここでは「保管とはなにか?」を、初めて物流に触れる方でもわかるように、やさしく解説していきます。
「保管」とは何をしているの?
保管とは、商品や資材などのモノを、必要なときまで適切な場所で管理・保持しておくことを指します。
単に「置いておく」というよりも、以下のような条件を整えて安全かつ効率的にモノを管理することが保管の目的です:
- 適切な温度・湿度の維持
- 商品ごとの保管ルール(たとえば食品は冷蔵、化粧品は日光NGなど)の遵守
- 出荷や在庫管理のしやすさを考慮したレイアウト
- ラベル・ロケーションの管理によるトレーサビリティの確保
つまり、「在庫があるだけ」ではなく、「管理された在庫を、必要なときにスムーズに出せる状態にしておくこと」が保管の本質です。
倉庫=保管場所 というわけではない?
よく「倉庫=保管する場所」というイメージがありますが、実際の倉庫業務には保管以外の役割(検品・仕分け・梱包など)も多く含まれています。
その中でも、「一定期間モノを保つ」という工程だけを切り取ったのが保管業務になります。
したがって、たとえば以下のような使われ方をします:
- 「一時保管」:出荷前に商品を一時的に保有する
- 「長期保管」:在庫をある程度の期間ストックしておく
- 「定温保管」:決まった温度帯で商品を保つ(冷蔵・冷凍など)
「在庫管理」との違いは?
「保管」と「在庫管理」は似ているようで少し違います。
| 用語 | 意味 |
| 保管 | 商品を安全・適切に物理的に保有している状態を保つ |
| 在庫管理 | 商品の数量・場所・状態などをデータで管理し、必要なときに動かせる |
つまり、保管が「現場の管理」だとすると、在庫管理は「情報の管理」とも言えるでしょう。
両者がしっかり連携してこそ、物流の効率化・トラブル防止につながります。

どうして保管が物流にとって重要なの?

物流における「保管」は、単なる“モノを置く”というだけではありません。
実は、保管の質や仕組み次第で、物流全体の効率・コスト・ミス率が大きく左右される重要な要素です。
ここでは、なぜ保管が物流の中で重要視されるのかを、3つの観点から詳しく見ていきます。
1. スムーズな出荷の準備ができる
商品の出荷は、「必要な商品を、必要なタイミングで、正確に届ける」ことが基本です。
そのためには、在庫がきちんと管理されていなければなりません。
保管がしっかりしていると:
- 欲しい商品がどこにあるかすぐに分かる
- ピッキングしやすい場所に置かれている
- ロット・期限別などの条件に応じて出荷できる
というように、出荷作業の精度とスピードが安定します。
反対に、保管が雑だと「在庫が見つからない」「別ロットが混ざった」といったトラブルが発生し、出荷遅延や誤出荷につながります。
2. 在庫ロスやスペースロスを防げる
「ちゃんと保管されていない=在庫が把握できていない」と、以下のようなムダが生まれやすくなります:
- 在庫があるのに気づかずに追加発注してしまう
- 賞味期限や使用期限を過ぎて廃棄になる
- スペースに無駄が多く、作業導線も悪くなる
こうしたロスはコストの増加に直結します。
つまり、良い保管体制は「在庫ロス・保管スペースロス・作業ロス」すべてを減らし、会社の利益を守る役割も果たしています。
3. 安全・品質・責任の確保につながる
保管には「安全に保つ」という大切な側面もあります。
たとえば:
- 落下や破損を防ぐための棚や仕切りの使用
- 直射日光・湿気などから商品を守る配置
- 冷蔵・冷凍・常温など温度帯ごとの保管分け
これらは、お客様に正しい状態で商品を届けるための「品質維持」につながります。
また、トラブルが起きた場合にも「いつ、どこで、どの状態で保管していたか」を明確に記録していれば、物流会社としての説明責任も果たせます。
まとめ:保管は“物流の土台”
保管は、物流の中でも地味に見えがちな工程ですが、その精度ひとつで物流全体のスムーズさ・コスト・信頼性が大きく変わります。
- 出荷を正確に
- ムダなく在庫を管理し
- 品質と責任を守る
この3つの軸を支えているのが、保管という存在なのです。
どんな種類の保管があるの?

一口に「保管」といっても、商品や業種によってその形はさまざまです。
ここでは、物流現場でよく使われる代表的な保管の種類を、目的や温度帯などに分けてご紹介します。
1. 常温保管
もっとも一般的な保管方法です。
食品・日用品・雑貨・衣料品など、特別な温度管理が不要な商品を、直射日光を避け、風通しの良い所で保管すること。
- 特徴:コストが比較的安く、保管効率が高い
- 注意点:湿気や直射日光、埃などの影響を受けないようにする必要あり
2. 冷蔵・冷凍保管
食品や医薬品など、温度が品質に直結する商品に用いられます。
| 保管方法 | 温度帯 | 対象例 |
| 冷蔵保管 | 0~10℃ | 野菜、果物、乳製品など |
| 冷凍保管 | -18℃以下 | 肉、魚、アイスクリームなど |
これらの保管は温度管理に関する厳格なルール(HACCPなど)が求められます。
3. 危険物・特別管理品の保管
引火性液体・化学薬品・塗料・ガスボンベなどの危険物を保管する際には、消防法に基づいた専用倉庫が必要になります。
また、医療機器や高額精密機器などは、防塵・防湿・温度管理・セキュリティの面でも特別な対応が必要です。
4. 一時保管・長期保管
期間によっても分類できます:
- 一時保管:入荷〜出荷までが短期間(数日〜数週間)
例:EC商品のフロー型保管、加工前の商品置き場 - 長期保管:数か月〜年単位で保管
例:季節商品や予備在庫、展示会用資材など
商品回転率や保管料のバランスを考えた運用が求められます。
5. 棚保管・パレット保管
実際の保管方法として、商品サイズや重量によっても使い分けがあります。
| 保管方式 | 特徴 | 向いている商品 |
| 棚保管(ラック保管) | 小ロット、軽量、手作業中心 | アパレル、雑貨、小物類など |
| パレット保管 | フォークリフト対応、大量・重量物に最適 | 飲料、ケース単位の商品など |
倉庫レイアウトによって、「ピッキング効率」や「在庫確認のしやすさ」が変わるため、商品特性に応じた設計が必要です。
まとめ:商品の特性に合った“保管の選択”が大切
保管は、「どこでも・なんでも置ける」わけではありません。
商品ごとの特性(温度・湿度・回転率・法規制など)に合わせて、最適な保管方法を選ぶことが物流品質の第一歩です。
保管方法によって何が変わるの?

保管のやり方を変えるだけで、物流業務の効率やコスト、ミスの発生率などが大きく変わることをご存知でしょうか?
ここでは、保管方法が実務に与える影響を、「コスト」「作業効率」「精度」「安全性」の4つの視点から詳しく解説します。
1. コストに影響する
保管スペースの使い方や、温度管理の有無によって、保管コストは大きく変わります。
- 棚保管 vs パレット保管:小ロットで高単価の商品は棚で保管したほうが効率的。一方で、大量商品はパレット単位で保管したほうが坪単価は抑えられます。
- 冷蔵・冷凍 vs 常温:冷凍倉庫は電気代や設備維持費が高く、1坪あたりの保管料も常温より数倍かかることがあります。
つまり、「商品に合った保管方法を選ばないと、ムダな費用」が発生するということです。
2. 作業効率が変わる
保管レイアウトやロケーションの工夫で、ピッキング・入出庫作業のスピードが大きく変わります。
- 棚の高さや通路幅によって、作業員が取り出しやすい/取りにくい商品が出てくる
- 同じ商品のロットがバラバラに保管されていると、探す手間が増える
- 重量物が人力保管されていると、作業の安全性・効率も下がる
保管方法を見直すことで、「作業時間の短縮=人件費削減」につながるのです。
3. 在庫精度・出荷ミスに影響する
保管方法が適切でないと、在庫の取り違え・出荷ミス・ロット混同が発生しやすくなります。
- 同じ商品が似たような場所に雑多に置かれている
- 仕切りが甘くて別商品と混ざってしまう
- ラベルやロットの表示が見えづらい
こういった状態だと、目視での確認に頼る作業が増え、ヒューマンエラーの温床になります。
保管とロケーション管理を正しく整えることで、在庫の「見える化」が進み、トラブルの防止につながります。
4. 商品の品質保持や安全性に関わる
食品や医薬品など、品質が時間や環境に左右される商品は、保管方法がそのまま商品の劣化リスクに直結します。
- 適切な温度管理ができていない
- 湿気や直射日光にさらされる場所に置かれている
- 破損しやすい商品を高所に積んでいる
こうした保管ミスは、商品価値の低下だけでなく、重大なクレームや法令違反にもつながるリスクがあります。
まとめ:保管を見直せば“物流の質”が上がる
保管は「モノを置いておくだけ」ではありません。
“どう置くか”が、物流全体の生産性・安全性・信頼性に直結します。
- 保管コストを下げたい
- 作業効率を改善したい
- 在庫ミスを減らしたい
- 品質トラブルを防ぎたい
こういった課題がある場合は、保管方法の見直しが大きなカギになるかもしれません。
倉庫の種類とそれぞれの特徴
「保管」とひとことで言っても、どのような倉庫を使うかによって、向いている荷物や使い勝手が変わってきます。ここでは代表的な倉庫の種類と、その特徴をわかりやすくご紹介します。
1. 常温倉庫(普通倉庫)
概要:最も一般的な倉庫で、温度や湿度の特別な管理はされていないタイプです。
向いている荷物:
- アパレル
- 雑貨
- 日用品
- 書籍など
特徴:
- コストが比較的安い
- 扱いやすく汎用性が高い
- 天候の影響を受けにくい構造になっていることが多い
2. 定温・冷蔵・冷凍倉庫
概要:温度管理が可能な倉庫。商品の鮮度や品質を保つ必要がある場合に使用されます。
向いている荷物:
- 食品全般(生鮮・冷凍・チルド)
- 医薬品
- 化学製品など
特徴:
- エネルギーコストがかかるため保管料金はやや高め
- 衛生管理が厳しく、各種認証を取得している倉庫も多い
- 保管と同時に温度履歴管理が求められることも
3. 保税倉庫
概要:税関の監督下で貨物を保管できる倉庫。輸入手続き前の保管や、再輸出を予定している商品の一時保管に使われます。
向いている荷物:
- 輸入品(通関前)
- 関税の発生を遅らせたい製品
- 海外取引を行うメーカーや商社の在庫
特徴:
- 関税を一時的に保留できるメリット
- 保税区画内で軽作業ができる場合もある(例:ラベル貼付)
4. 自動倉庫(AS/RS)
概要:機械設備を使って自動で棚入れ・棚出しができるハイテク倉庫。効率重視の保管スタイルです。
向いている荷物:
- 小型〜中型の製品
- 回転率の高い商品
- 高度な在庫管理が求められる商材
特徴:
- 人件費削減・省スペース化に貢献
- 初期投資は高いが、長期的に見るとコスト削減が期待できる
- システム障害への備えが必要

保管で気をつけたいポイント

倉庫に商品を預ければ「安心」と思いがちですが、実は保管にも細かなリスクやトラブルの種が潜んでいます。
ここでは、スムーズで正確な保管を実現するために、現場で気をつけるべきポイントを紹介します。
1. 商品の特性に合った保管方法を選ぶ
すべての商品を同じように保管すればいいわけではありません。
商品にはそれぞれ「湿度に弱い」「直射日光に弱い」「温度変化に弱い」などの特性があり、それに合った環境で保管しなければ劣化や破損のリスクがあります。
例:
- 食品 → 定温倉庫 or 冷蔵倉庫で保管
- 精密機器 → 防塵対策+衝撃緩和スペース
- アパレル → カビ対策のため除湿が必須
2. 在庫の見える化(可視化)を実現する
倉庫にある在庫の場所・数量・状態が分からないと、出荷時や棚卸しの際にミスやロスが発生しやすくなります。
紙やExcelでの管理では限界があるため、WMS(倉庫管理システム)を使ったリアルタイムの在庫管理が重要です。
見える化のメリット:
- 出荷ミスの防止
- 棚卸し効率の向上
- 保管スペースの最適化
- 在庫過多や欠品リスクの回避
3. 先入れ先出し(FIFO)を徹底する
賞味期限のある商品や、品質劣化しやすい製品については「古いものから出す(=先に入れたものを先に出す)」というルールが重要です。
この運用ができていないと、「新しい在庫を出荷して、古いものが残る」 → **「劣化・廃棄」**という無駄が発生します。
対応策:
- 保管棚の配置を工夫する
- 棚札やバーコードでロット番号管理
- WMSで出庫順を自動指示
4. ロケーション(棚割)の最適化
商品のサイズや回転率に応じて、最適な保管場所を設定することもポイントです。
頻繁に動く商品を遠くの棚に保管していたり、重たい商品を高い場所に保管していると、効率も安全性も下がってしまいます。
チェックすべきポイント:
- ピッキング頻度が高い商品は手前や下段に
- 類似商品を隣り合わせにしすぎない(誤出荷防止)
- 動線がスムーズな配置になっているか
5. 倉庫内の安全管理を徹底する
保管業務には、フォークリフトの移動・高所作業・重い荷物の積み下ろしなど、さまざまなリスクがあります。
定期的な安全教育やルールの徹底、整理整頓された作業環境が、事故やトラブルを防ぐ鍵になります。
現場でありがちなリスク:
- 通路への荷物の仮置き
- ラベルの貼り間違い
- フォーク操作中の接触事故
神谷商店が考える“保管の価値”とは?

神谷商店では、「保管=ただ商品を置いておく場所」だとは考えていません。
“次の工程に正しく、スムーズにつなぐための基盤”として、「保管」そのものに高い品質と役割を求めています。
ここでは、神谷商店がどんな思いで保管業務に取り組み、どんな価値を提供しているのかをご紹介します。
1. 次の工程に迷わずつなげる“保管品質”
入荷→保管→出荷と続く物流フローの中で、神谷商店が特に重視しているのは「次の作業者が迷わず動ける状態」を保つことです。
- 商品がどこにあるかすぐに分かる
- 在庫が何個あるか正確に把握できる
- ラベルや情報にムラがない
- 倉庫が整頓されており安全に動ける
こうした状態を維持することで、倉庫内だけでなく、お客様の業務全体の生産性を上げる“土台”を整えています。
2. 「保管しながら整理する」ことを徹底
神谷商店では、「とりあえず置いておく」ではなく、**“使うための保管”**を徹底しています。
- 棚やロケーションを定期的に最適化
- 動きが多い商品は出荷動線上へ移動
- 類似品の混在リスクを防ぐために仕分けを細かく
このように、「ただしまう」のではなく「次の使いやすさ」を意識した保管を行っています。
3. 柔軟な保管ニーズにも対応
たとえば、お客様からこのような声をいただくことがあります。
- 「繁忙期だけ一部在庫を預けたい」
- 「SKUごとに棚を分けてほしい」
- 「緊急出荷に対応できるように、出しやすい場所で保管しておいてほしい」
神谷商店では、自社開発のWMSと柔軟なロケーション設計により、こうした細かな保管要望にもきめ細かく対応しています。
お客様の業務スタイルや業種に合わせて、「保管のしかた」から最適化していくことも可能です。
まとめ:保管の質が、物流全体のパフォーマンスを決める

「保管」と聞くと、「ただ商品を置いておく場所」と思われがちですが、物流においては非常に重要な役割を担う工程です。
在庫管理・品質維持・スペースの有効活用など、あらゆる業務の“起点”として、保管のあり方ひとつでその後の作業効率やミスの発生率が大きく変わります。
また、保管は倉庫業務の中でも“最も長く商品と向き合う時間”とも言えます。
だからこそ、「保管=止まっている状態」ではなく、「保管=流れを整える時間」として捉えることで、物流全体の質が高まっていきます。
神谷商店では、そうした視点から保管業務を設計・運用し、
お客様の商品を「正しく・安全に・ムダなく」管理することで、次の工程をスムーズにつなぐことを大切にしています。
「ただ預けるだけでは不安」
「保管しながら、もっと効率化できないか?」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
“保管品質”の見直しが、物流全体のレベルアップにつながります。
